「…………」
残されたあたしは1人、本棚を背に座り込む。
先程転落した際に転んだ脚立に目を向けて、また床に視線を落とした。
『だって知ったら……』
あの後の、新堂くんの言葉。
もしあたしの勘違いじゃないなら……。
『だって知ったら、もっと好きになっちゃうでしょ』
……こう、言ったはず。
ってことは……???
淡い期待がよぎるけど、でもそもそも新堂くんの予想してる『あたしの好きな人』があたしの頭に浮かんでいる人と一致しているとも限らない。
「………頭が、混乱してきた…」
この恋には、謎が多すぎるよ。
ため息を吐いて、考えるのを放棄しようとした時。
「……?…ゆり先生……?」
カウンターの奥。いつも先生が引きこもっている部屋から、本を一冊手にしたゆり先生が出てきた。
…あれは、毎週八神くんが借りている本……?