【完】金曜日は、八神くんのモノ




「先輩!!!」

「っ、……?!」


突然の聞き覚えのある声にドアの方を見ると、想像した通りの彼の姿。


……どうして…?


ちらりと、時計を見る。
始業までは、残り2分を切ってる。

再び彼を見ると、やたら真剣な目で、「あの、」と口を開くから、どきりとして慌てて立ち上がる。
ガタンッと大きく音が鳴って、集まっていた注目の視線が、更に注がれる。


「ひ、昼休み!!昼休みに、聞くから…、だから今は、…帰って」


上手く目も見れずに、語尾もきっと消えそうなほど小さい。
でも、八神くんには聞こえていたみたいで。


「………わかりました。じゃあ、昼休み絶対に空けててください。迎えに来るので」

「、うん」


伏せられた目と、沈んだ声に、胸が痛む。

彼の背中がドアの陰に消えるのとほぼ同時にチャイムが鳴って、静まっていた教室も、授業の用意へと忙しなく動き出す。


「…彼は来てくれるのに、真琴が自分から動くのは一体いつになるんだろうね」


そんな理彩の呟きは、ドアを開けて入ってきた先生の声に掻き消されて、あたしには聞こえなかった。