*
「今日はありがとう、柊。紫も喜ぶと思う」
「ううん。こちらこそありがとう。お役に立てたならよかった。
それと…ご飯まで。」
ごめんね、絶対今度奢るね、と新堂くんを見つめる。
彼はご飯、そしてパフェまで奢ってくれて。
本当、優しいしかっこいいし、いい人なんだけど。
「じゃあ、また明日」
駅の改札に着いて、改札を抜けようとした時。
「あ、柊…!あの、」
「……!」
新堂くんが何かを言いかけたのと同時に、携帯のバイブが鳴る。
メッセ??
もしかして、八神くんから??!
そう思って、慌てて携帯を開くと。
【ねー真琴ー、明日の古文ってさー】
……なんだ、理彩か。
そうだよね、きっと八神くんは、あたしが見ていたことなんて、気づいてない。
ため息を吐いて携帯をしまうと、
「……それ、彼から??」
「え」
新堂くんは、あたしのポケットを指差す。
あたし、そんなに顔に出てた??
「あーー…、ううん。理彩から。ごめんね、会話の途中だったのに。
何か言いかけてたよね?」
首を傾げると、
「……ううん。いいよ、大したことじゃないし。
じゃあまた明日。
それと…今度は、奢ってね」
「!
ま、また明日……。」
改札を抜けて、ホームに降りる。
『今度』って、それは…次のデートの約束ってこと??
……だめだよ、もう。
この次にまた彼と出かけても、きっとまた迷惑をかけてしまう。
脳裏の笑顔がチラついてしまうから。
タイミングよく来た電車が、髪を揺らす。
本当は、わかってたくせに。
あの日のことを思い出して胸が痛むのも、
あの場面を見ても、嫌いだと思いたくないのも。
……あたしの気持ちはもうとっくに、決まっていたんだわ。