【完】金曜日は、八神くんのモノ





「…知らない。もうすぐ図書便りの発刊日だし、仕事でもしてるんじゃない?」

「ふーん…。そういうもんですか??」


八神くんは奥の部屋に視線を移してから、本棚へと向かう。


ゆり先生の何が、そんなに気になるの。
あたしには、からかってばかりで踏み込んではこないくせに。

ぼんやりしながら、先程選んだ本の背を撫ぜる。
と、


「先輩、ハンコお願いしまーす」

いつのまにか本を手にした八神くんが、あたしの目の前に貸し出しカードを差し出していた。


「…え、」

突然のことに戸惑ってしまうあたしに、八神くんが不意にあたしの手を取って、印を押す。


「……っ、」

「何びっくりした顔してるんですか。
これ、先輩の仕事でしょ」

「い、いや、そうなんだけど……」


最近、ゆり先生がずっと押してたから、忘れてた…。

というか、それよりも!



「八神くん、手…!!!」

掴まれた腕を見せつけるようにブンブンと振って見せると、八神くんは「あぁ」と言いながらパッと離す。

熱かった繋がれた箇所が、空気に触れて少しずつ冷えていく。



「…でも、いいですね」

「え?」