「……なんか癪だから、言いたくなくなったんだけど」
「はい?!なんで!!」
むすっとした表情を作ると、理彩はハンバーガーを食べる手を止めてあたしに食ってかかる。
「だって…てかあたしはどうであれ八神くんからしたら別に有益な情報でもないじゃない?
………あたしに特別な好意があるわけでもあるまいし」
「…………っ、はぁーーーー」
「なんでため息?!!?!」
意味わかんない。だってなんとも思ってない、ただ興味本位で関わってるだけの相手に「明日他の人とデートしてくるから」なんて、自意識過剰もいいとこ。
「だから?」の一言で終わりに決まってる。
「…真琴のこの鈍感さはいつか波乱を招くね……」
「はぁ?」
呆れたようにため息を吐いてポテトを口に放り込む理彩の言葉に疑問符を浮かべると、またため息をこぼされた。
あたしが一体なにをしたっていうの。
首を傾げると「まあわかんないならいいけど〜」と笑いながら、理彩はトレイを持って立ち上がる。
「えっ、もう食べ終わったの」
「真琴食べんのおっそー」
「…うるさいな」
膨れて、理彩の口にポテトを突っ込む。
「っうわ!なに、ちょっと危な!!」
「なにってうるさい口塞いだだけ。いらないからあげる。食べていいよ」
半分程残ったポテトを差し出すと、理彩は目を輝かせて、また座る。
「やったラッキー!真琴大好きー!」
「……はあ、」
ほんと、調子いいんだから。
ため息を吐いて笑って、
頭の中に浮かぶのは、来週の一大イベントのこと。
………また新しい服、買わないとなぁ…。



