「おめでとうございます!女の子です!」
赤ちゃんの元気な声が聞こえる。水沢は、ホッとした顔をした。

「菜留!来てくれたんだ!」
「うん。可愛いね」
「でしょ。」
「名前はもう決めたのか?」
俺が聞くと、朝野は笑って頷いた。
「大空ってかいて、つばさ。」
「大空ちゃんかー。いい名前じゃん。」
木嶋も笑って頷いた。
「真昼ー、良くやったなぁー」
「何、半べそかいてんのよ。辛かったのは私なんだからね!」
俺は笑った。

「成宮くーん、ちょっと買い出し手伝ってー。」
「気持ち悪いな、拓人。」
「ひどっ!」
「ほらほら、早く行ってきてー」

「……で、どうなの?」
「えっ?」
「えっ?じゃないわよ。成宮くんとはどうなの?」
「そ、それは…」
真昼ちゃんは、いたずらっぽく笑った。
「結婚する時は呼んでね!」
私の顔が、暑く火照った。

「可愛かったな。」
「そうだね。」
「そういえば、朝野となんか話したのか?」
「えっ、な、なんか…」
「俺はさー、拓人に、結婚する時は呼べよって言われた。」
私はちょっと笑った。
「?」
「私も、真昼ちゃんから同じ事言われたの。」
「まじか!あの二人は、考えてることが一緒だな。それとも、わざとか?」
と言って、彼も笑った。


「俺と結婚してください。」


そう言われたのは、私たちの生活が落ち着いたある日のこと。
私は嬉しくて、泣いて、声にならずひたすら頷いた。

「菜ー留ー!」
真昼ちゃんは、私に抱きついた。
「おめでとうーーーー!!!」
「あうー」
大空ちゃんも、可愛く笑いながら、手を叩いていた。

「やるな。」
「なにがだよ。」
「あの、木嶋の気持ちをつかむなんて!」
「お前は、高校からよく続いたな。」
俺が言うと、拓人は「ふふん」と鼻を高くした。
「当たり前だろ、俺の愛は深いんだぜー!」
「お前、恥ずかしいから大声出すな!」
拓人が笑った。


「大騒ぎだったな。」
彼言って苦笑した。
「…羽陽くんは、子供いらないの?…今更だけど、私のこの体じゃ無理なんだよ?」
「いいよ、別に。お前といられるんだしさ。」
私は、嬉しさと恥ずかしさで、顔を赤らめた。


俺に色をくれた、君へ


あの時、君とペアーになれてよかった。


あの日、君が慰めてくれて、


一緒に居てくれて、



俺の知らない色をくれて、



ありがとう。



……



手紙をくれたことで、私に勇気をくれたこと、本当に感謝してる。

この手紙をくれた未来の私は、今、幸せですか?

幸せであってほしいと思う。

私が書いた手紙は届いたかな?

もう一度、彼には会えた?

一人じゃできないことも、彼と一緒ならできる気がする。

だって、言ったでしょ。

右翼と左翼。

どちらもあって、初めて飛べるんだって。








桜が舞う。


泣いてるように見えたこの花は、今では、


風にまいながら踊る、小さな妖精。



この妖精は、もしかしたら、


幸せを運んでくれるかもしれない。




「菜留」


名を呼ぶと、彼女は振り向く。


優しく笑って。


FIN