先輩は、お姉ちゃんを実の兄に奪われて、恋愛に臆病になってしまったのだろうか。
信じていた人間、2人から同時に裏切られるなんて悲しいだろう。
苦しかっただろう。
「でも、また恋をしたいと思える相手が現れた」
「お姉ちゃん……ですよね」
再び、お姉ちゃんへの気持ちに火がついた。
というより、ずっと、心の中では忘れてなんていなかったんだ。
「違うんだ」
「え……」
「菜帆じゃないよ」
お姉ちゃんじゃ、ない……?
「でも、お姉ちゃんに、キスしてたじゃないですか。そのあと病院で、わたしに今でもお姉ちゃんが好きって……言ったじゃないですか」
お姉ちゃんへの気持ちが、戻ってきて。
抑えられなくなって。
それで、キスしてしまったんじゃないの……?
「茉帆ちゃん、忘れてない? 僕は、なんとも思ってない子とキスできるような男だよ」
「!」
「菜帆への気持ちは、もうない」
「だったら、なんで、あの日キスしたんですか……!!」
「ムカついたから」
ムカついた……?
「茉帆ちゃんに近付くなって言われて、凄く腹がたった。どうして菜帆にそんなこと言われなくちゃならないのかって。それで、口をふさいでやった。それだけだよ」
「…………」
あのキスは、暴力的な、キスだったんだ。
同時に、兄の結惟さんを裏切る行為でもあった。
「菜帆がなんといおうと、僕は茉帆ちゃんと会うつもりだった」
「どうして……お姉ちゃんのこと好きなんて嘘ついたんですか?」


