「柳くん、妹借りていいかな」
「……どうぞ」
お姉ちゃん……?
「それじゃ、悠汰(ゆうた)は僕の家においでよ」
先輩の申し出に、
「はぁ?」眉をひそめる柳くん。
「オーディオ買ったんだけど、繋ぎ方がわからなくて」
「あのなぁ。そんくらい説明書読め。桃惟ならなんてことないだろ」
「いいじゃん。夕飯ご馳走してやるから」
「……その話、のった」
なんだか、仲良さげな雰囲気だ。
てっきり同じマンションといっても、それだけの関係で、挨拶以上の付き合いはないと思っていた。
わたしの前では「水上先輩」だった呼び方は、下の名前へと変わっている。
「それに……、色々と聞きたいことあるし」
柳くんになにか言ったようだけど、聞こえなかった。
「教えてやらないって言ったら?」
「絞り出してあげる」
先輩と柳くんの、よくわからないやりとりを眺めていると、
「行こ」とお姉ちゃんに手を引かれ、わたしは歩き出した。


