「って……キモいな俺」

「キモくないよ! ぜ、全然キモくないよ!」

「その割には、うろたえてんだけど」

「それは……」


柳くんが、女の子なら一度は言われてみたいような甘い言葉を……今日一日のうちに、何度も吐くからだ。

そんなことをされると、友達だと思っていても、少し意識してしまうというか。


「茉帆……?」

「へ……」


背後から聞こえてくる声。

振り返ると、そこにはお姉ちゃんがいた。


「なんで茉帆がここに」


こっちの台詞だよ、お姉ちゃん。

どうしてお姉ちゃんが柳くんのマンションから出てくるの?


「菜帆、忘れもの……」


――!


お姉ちゃんの後ろから現れた人。

それは、紛れもなく、水上先輩だった。