「柳くん……?」
「俺にしとけば」
「…………」
壁に打ち付けられる雨音が、ぼたぼたと大きな音をたてている。
豪雨はまだ続いているらしい。
テレビ画面からは、英語が聞こえてくる。
「先輩のこと、諦めるんだろ」
「…………」
「会わないのに、想い続けてどうする。辛くないのか?」
「最後のキスが、先輩とのあのキスなら、悪くないかもって思えるわたしは……バカなのかなぁ」
「……!!」
「先輩との思い出を、上書きしたくない」
「……そりゃ、バカだな」
柳くんが、呆れたように笑う。
「でも――」
柳くんは、身体を起こしてわたしから離れるとこういった。
「そんなとこも、たまらなく可愛いと思ってる俺が、1番バカなんじゃね?」


