「いいこと教えてやるよ」

「いいこと?」

「このマンションに、住んでるよ」

「住んでる……って?」

「水上先輩」


――!?


「先輩が……?」

「会ってこれば」

「ど、どうして……」

「それは、茉帆が先輩のこと、なにも知らなさすぎるから」

「!!」

「会って、先輩の気持ち聞いてこいよ」


そういう柳くんの声は、驚くほど優しくて。

思わず、

「会いたい……」

自分でも今の今までハッキリとみえていなかった本音が、口から漏れ出てしまった。


「服、すぐ乾かしてやろうか」


立ち上がった柳くんが、ハンガーにかかったワンピースに手をかける。

乾燥機に入れるつもりだろう。

「待って」と柳くんを追いかけ、腕をつかんで止めた。


「会えないよ」

「どうして」

「わたしは、先輩にとって、〝そういう対象〟じゃないし……」

「決めつけんなって」

「それに、わたし、先輩にもう会わないって……、約束したから」