結局柳くんは、それ以上、先輩のことは聞いてこなかった。
わたしもまだ先輩とのことは頭の中で整理がついていなかったし、お姉ちゃんとの昔の話を出すわけにもいかなかったから、深く追求されなくて助かった。
というか、全ては柳くんの優しだと思う。
わたしに気を使って、あれこれと聞いてこなかったのだと思う。
それからは、柳くんのヤンキー時代の話を聞かせてもらった。
それは盗んだバイクで走りだすような話でも、喧嘩で100人勝ちしたという話でもなく。
髪をど派手に染めていたことで不良扱いされてしまったことだったり。
後輩が慕ってきているのを『今日も柳が舎弟をつれてる』なんて噂に尾ひれがついて『柳がパシってる』と一部の生徒に勘違いされたりして周囲から恐れられていたという武勇伝だった。
少し話をするつもりだったのに、結局それから2時間も話し込んだことには、あとで時計をみて驚いた。


