次の日、水沢は携帯に、木嶋は、カバンにあのストラップを付けてくれていた。

木嶋とよく一緒に帰るようになって、ある噂がたった。

それは、

俺達が付き合ってるんじゃないかという、そういうもの。

「そーいう系、好きだよな。」
「ホントだよなー。ま、俺も好きだけど。」

俺はさして気にならないんだけど……

「ねね、木嶋さん。成宮と付き合ってるってほんと??」
「え?付き合ってないよ?」
「ほんとにー?すごい噂たってるよー?」
「噂?」

「恥ずかしい…」
「俺は別にいいかなぁとか…」
木嶋の顔が赤くなる。
「あ、いや、ごめんね!嫌だよねっ!!」
「え、いや…そういうわけじゃないけど…」
「え?」
「え?あ、あの、私何言ってるんだろ!?」
と、木嶋は照れくさそうに笑った。
くそぉ〜、可愛いな、おい。
……とか思っちゃう俺って、変態??

「おはよー、木嶋」
「お、おはよ」
「おっはよー皆の衆ー!」
「二人しかいないけどな。」
「おはよ。&はじめまして!」
「「え?」」
水沢はニヤッと笑った。
「俺の彼女」
「この子が!?」
その子の名前を、朝野 真昼といった。
名前の通りというか、明るい子だ。
「可愛い子じゃん。お前には持もったいねぇなぁ。」
「勿体なくねぇだろ!」
木嶋がクスクスと笑った。つられて俺も笑う。結局、四人とも笑っていた。

今知ったのだが、朝野も同じクラスだったようだ。なんだか、楽しくなりそう。

帰り、ポストの中を見ると、手紙が入っていた。

……

成宮くん

明日は、真昼ちゃんのことを見て欲しい。
水沢くんはその日、風邪で休んじゃうから。
絶対に目を離さないで、特に帰りは。
出来れは、一緒に帰ってほしいんだけど…
お願い。私には、大切な友達なの。初めて気軽に話せる女友達で…
とにかく、お願いします。

「……了解」

次の日、本当に水沢は風邪で休んだ。
また、手紙のとおりだ。
朝野に何か起こるとかはわかんないけど、何もなければいい。

「なぁ、あs……っていねぇ!」
「さっき帰っていったよ?」
「え、マジか!ちょっと、追うぞ!」
「え、ええ?」

慌てて校門を出ると、小さいけど朝野の後ろ姿が見えた。
「どうしたの?」
「え、えっと……」
さすがに、お前から手紙が来てなんて言えない。
「あいつに借りてたの、今日返せって言われてたの忘れてて」
「……そっか」
信じてくれたのかな?
まったく、木嶋はいいやつだ。

朝野は角を曲がった。
それから、大通りに出る。と、その時
赤信号なのに、車が無視して走ってきた。
「朝野!」

「……っ!」
間一髪で、朝野の腕を引っ張った。
「あ、危ねぇ……!」
車は、ほかの車にあたって止まった。
「大丈夫!?」
木嶋が掛けてくる。
「あ、ありがとう……!」

「危なかったね…」
「あぁ…ほんと、よかった…」
俺はほっとため息をついた。
「…成宮くんは、すごいね。」
「え?」
「…それに、なんか変わったよね。」
「そうか?」
「うん」
木嶋は笑った。優しく。