「和ぁ」

「なーん?」


私の名前は三枝和(さえぐさのどか)。

福岡に住む高1、16歳。

身長167cmと、だいぶ高めの女子高生。

胸下まで伸びた髪はポニーテールにして、邪魔にならないようにまとめている。

運動は苦手……とまではいかないけど、まぁ嫌い。

動くぐらいなら家でゴロゴロしてたい派。

通ってる高校は地元よりちょっと遠いから、同じ中学から通ってる人は居ないんだけど。

最近やっと高校生活にもなれてきて、友達もできたって感じです。

「今日うち当たるんよ……!やけんさ……」

「ノート見せてって言いたいと?無理よ」

そんなぁぁぁぁ……と、声を上げるのはこの学校に入って一番最初に出来た友達、山内咲希(やまうちさき)。

身長158cmと、私より10cmも小さい。

茶色がかった髪をショートで切りそろえ、少しつり目な感じが猫のような雰囲気を醸し出す。

勉強は苦手で、体を動かすことに関してはピカイチなところも猫に似てるような……。

うん、今日も可愛いね。

「和様ぁ……。今回だけでもぉぉぉ……!」

「それ前も言ったやん。ほら、先生来る前に教えちゃるけん、ノート出して」

「うぅ……」

渋々ノートを出す咲希に、私はシャーペンを差し出す。

「この問題はさ、こいつをここに代入すると。で、X出して……って、それだけやん」

「なんで代入とかすんの?」

「え?そういう問題だから?」

「もう訳分からんんんんんん!!!!」

いやいや、そういう問題やけん、しゃーないやん……。

お前の頭の中はお花畑か。

「はぁ?!花畑やないし!」

「うお!私の心の声聞こえとったか!」

「もろ口に出しとったわ!」

ぺしっと手を叩かれる。

「あぁ。せっかく教えてあげたのに、ひどい仕打ちやな」

私は、叩かれた手をさすりながら咲希を睨む。

「だって和がバカにするけん……」

「だってバカやん」

「うるさいっ!」

ぷくーっと頬を膨らませる咲希。

はいはい可愛い。

私たちは、見た目も中身も全然違うようですが、一つだけ共通点があります。

「そんなことよりさ!昨日のやつ、聞いた?!」

咲希がキラキラした目で聞いてくる。

「あぁ、聞いたに決まってんじゃん!」

「やっぱり最高だよねぇ……」

『After the Rain!!』

After the Rainとは、知る人ぞ知る、ボカロ歌い手様。

『そらる』さんって人と『まふまふ』くんって人の、男性ふたりのペアユニット。

歌声が綺麗で、いろんな年代の人から高い支持を得てるんだよねぇ……。

「てか、新曲がやばいわ」

「ね。すごい心にきた」

私たちはうんうんと頷く。

そう、私たちはボカロ、歌い手、ゲーム、アニメ等々。

いわゆる『ヲタク』と呼ばれる部類の人間なのです。