口をとがらせて、あっちゃんを見ながら、

「恋なんて、そんな不確かなもの。信じられないし、どうせ終わるじゃない」


そう言うと、あっちゃんはふうんと頷いた後、

「終わった後にも残るもんがあんのよ?物事は今、この一瞬だけしか見ずに決めちゃだめなのよ?」


吸い終わった煙草を灰皿に押し当てて火を消した。


ママの過去の彼氏については知らないけど。パパを思い出しながら…


「ママ、モテたのに。どうしてよりによってパパなんか選んだのかな」


雑貨の上のほこりを拭きながらつぶやいた。


あっちゃんは、ちっとも不思議じゃない、という顔をしてる。


「なずなのパパ、かっこよかったよ?硬派で、喧嘩も強かったし」


け、喧嘩?

「いやいや、喧嘩とかないでしょ」

想像つかない。

そんなキャラじゃなかったし。


「え、まさか、私が思ってる人と違う人?」


そう言った私の顔を見て、


「はぁ?」

と驚いた顔をした後、ゲラゲラと大笑い。


「あのねぇ。あんたのパパは正真正銘あの人だよ。なずなが、お腹に宿って、結婚するってなった瞬間に落ち着いちゃってね」

なぜだかちょっと残念そう。


父も母も、結構ヤンチャだったのかな…


花屋は平日はそれほどでもなかったけれど、土日はいろんな年齢層の人がひっきりなしに訪れて、主にカーネーションを鉢で買っていく。

「来週が本番だから。母の日はね、もう…超稼ぎ時。頼むよぉ」

こんなふざけたこと言ってるけど、雑貨のセンスはよく流行りものから年配の方向けの雑貨までバランスよく取りそろえられていた。