「でも、確かにオウジの記憶がわずかだけど残ってるってことだよね」


かき氷を食べるのも忘れて、この不思議な感覚にみんな無口になっていた。


「とりあえず、食べよ」


樹里がそう言って、私と海晴くんもかき氷を口に運んだ。


「笹中さんは…一緒じゃなかったのかな」


私がつぶやくと、


「笹中さん?なんで?」

樹里が不思議そうな顔をしている。


あ、この話はしてなかったんだった…


「え?笹中さんなんて言ったかな」

海晴くんを見ると、海晴くんの目も泳いでいた。

ダメだ…樹里の目力が基準値を通り越している。


しかたなく、樹里に笹中さんのことを話した。

ごめんね、笹中さん…
心の中で謝罪した。


「へえ。笹中さんがオウジを、ねえ」

樹里が頷きながら、しばらく考えて、

「オウジは一体どんな人だったんだろうね」

そうつぶやいた。