それなのに、走っている時の湧き上がってきたあのワクワクするような感情。

もっと、速く。

追い抜きたい。

1番になりたい。


みんなの声援に応えたい、なんて。

私どうしちゃったのかな。



「なずな、あれ…見て」

樹里が私の肩をバンバン叩いてきた。


「痛い痛い…」


樹里の力強さは一体どこからやってくるのか。

樹里が指さしたほうを見ると、海晴くんが麗香と話している。


なんとなく不安がよぎる。


「何、話してるんだろうね」

樹里は興味津々な様子で、目が輝いている。

樹里ったら悪趣味。


だって…

「あまり、楽しそうな雰囲気では…なさそうだよね」


麗香が半泣きでなにか訴えているような感じ。

海晴くんの表情はよく見えないけど。


「もしかして、さっきのことでなんか言ったのかもね」


樹里は2人から目をそらさずジッと見ている。

さっきの海晴くんの後ろ姿を思い出した。


「でも、何って言ったんだろう?」

海晴くんが体の角度を変えて、海晴くんの顔が見えた。

麗香の剣幕もすごいけど、海晴くんの冷たい目も…怖かった。