片付けまで手伝ってくれた海晴くんを見送りに、エレベーターで下に降りた。


「なずなちゃんのお母さん、かき氷のこと覚えてたね」


「オウジって言ってたね」


「うん」


母の記憶の中にも、誰かが確かにいる。

まるでパズルのようにオウジのか欠片がちりばめられてるみたい。


「どうして、みんなが記憶を失くしているのか、それがわからない。そんなこと可能なのかな?」


「催眠とか?」


「何のために?」


「わからない」


しばらく黙って答えの出なさそうなものに虚しく挑んでいると、そっと頭に手を置かれた。

私の頭を包むような大きな手だ。


「話変わるけど。バスケやらないの?」


「え?」


予想外の言葉に、海晴くんの顔を見ると、


「バスケやってたんでしょ?写真、あったじゃん。県大会とか行ってたじゃん」


興味津々な顔。


「中学の時にね。今は、家事と勉強で手一杯だし」


目をそらすと、


「そっか」


海晴くんはそれ以上何も聞かなかった。