「あ、あの...そんなに見られると、ちょっと」

気づけば、顔が赤くなっている。

見すぎた?


「あ、ごめん」

慌てて謝ると、

「大丈夫。広野さん、肌の色も髪の毛の色も薄くて。瞳の色が茶色くていいなってちょっと憧れてた時もあって。だから、そんな見られると緊張しちゃって」


あまりに慣れないことを言われて、私は固まってしまう。


「あ、憧れ?私に?私なんかに?」

驚きを隠せない私に、

「そういう飾ってない感じがいいなって思う。いつも自然体で」

優しい声で、にっこり笑って話してる笹中さんが天使に見えてくる。


笹中さん、めっちゃいい娘じゃないですか。

「あ、ありがと。今日のこと、ずっと忘れないよ。私は笹中さんの大きな黒目、いいなって今思いながら見てたんだよ」

また笹中さんの顔が赤くなる。


「そういえば、話って」

「あ、そうだった」

笹中さんはそう言って、紺色のトートバッグの中から1冊の分厚い本を出した。

「これ、なんだけど」

『Diary』と書かれたそれは、名前の通り日記帳のようで付箋がついてあるページを開いて私の手元に置いた。