歩く女の子の後ろから、150㎝ほどの大きさのロボットがついてきた。


「これ、ボディガードロボット?」


女の子はこれとともに行動することが多い。

兄弟が少ないし同年代も少ないから、このロボットが友達や姉妹の役割を果たしてくれる。

一人っ子の僕にも買ってくれれば良かったのに…

そんなことを思いながら、ロボットをじっと眺める。


「小さいころからずっと一緒なんです」


女の子は愛着を持ってロボットに触れた。


白いワンピースの袖から見える白くて華奢な腕。

なずなも細い方ではあったけど。なずなよりも華奢そうだな…

って、僕の心を見透かすように、ボディガードロボットがこっちを見ている気がする。


リビングのソファに腰かけると、


「名前、聞いてもいい?」


前のめり気味になりすぎないように気を付けながら、尋ねた。

すると、視線をこちらへ向けて、まばたきをした。


長いまつげ、小さな鼻、丸い目元はなずなそっくりだ。


「久保川咲楽(さくら)です」

礼儀正しい雰囲気のたたずまいに、目を奪われながら…

何かひっかかった。

久保川?
今、久保川って言った?

ってことは、もしかして...


固まって咲楽ちゃんの顔を見る僕を、咲楽ちゃんは置き去りにして、話し始めた。


「これはうちに代々伝わる箱でして。月丘家に桜樹という名前の男の子が生まれたら、17歳になる8月の終わりに、この箱を持って行くように、と。この紙に書かれていまして」


そう言って広げた紙に書かれた文字は...


見覚えのある字だ。

なずなと、海晴くんの字。

やばい、ちょっとすでに涙ぐんでしまいそう。

「箱、開けてもいい?」

咲楽ちゃんは頷くと、箱をそっと差し出した。