「ごめんね、でも決まりなんだよ」

桜樹は首を横に振った。


「桜樹がいた証を、絶対残すから…記憶がなくなったとしても、心が桜樹を覚えているから」


桜樹が手で顔を覆った。


「や、覚悟はできてるはずなんだけど。ごめん、ちょっと寂しい…てか、だいぶ寂しい」

そのまま上を向いた桜樹に、


「当たり前だろ、そんな割り切れるような付き合いじゃないだろ。2度と来ない時間、一緒に過ごしてんだから」


海晴くんも手で目を押さえて言った。


ポツリと、雨が落ちてきた。

空も泣いているんだ、と思うとますます泣けた。