「和斗、まだ水あげてる?」


笑那さんが菊地くんの顔をのぞき込む。


「あげてないと思う?」

「あげてないわけないよね」

「わかってんなら聞くな」

「あげなくならないとあなたのことも見てもらえないわよ?」


笑那さんがあたしを見ていう。


「え?」

「形原とはそういうんじゃないから。もういいだろ。いくぞ形原」


菊地くんがあたしのカバンをつかむ。


「あ、待って」


菊地くんが少し早歩きだから引っ張られる格好になる。


ふたりのこと気になったけど。
言いたくないことならあえて聞かない。

言いたくなったら言ってくれそうだし。


「あたし諦めないから!」


笑那さんが叫ぶ。


「...うるせー」


菊地くんはぼそっとつぶやいてそのまま歩く。