「和斗くんっ!」


菊地くんとふたりで歩いていると、前方から走ってくる女の子がいた。


「...笑那(えみな)」


菊地くんが少し気まずそうな顔になる。


「ここにいたら通るかなと思って」


笑那と呼ばれた彼女がにっこり笑う。


「...そう」

「ごめん、彼女?」


笑那さんがあたしのことをちらっと見る。


「...違う」


そうとだけ答える菊地くん。


「違うんだ」


どことなく嬉しそうな笑那さん。


この人は菊地くんが好きなのかな。


「...なにしにきた?」

「和斗に会いたくて!」


菊地くんの腕に自分の腕を絡める。


「...そ」


菊地くんは振りほどこうともしないけど、彼女に目を向けるわけでもない。


あたし、邪魔かも。