「それは……平気だよ」
「へえ。絵に描いたような優等生が授業サボって平気なんだ」
「まあ……」
ダメージなんて。たいして受けないかな。
「それとも、優等生やめたいとか?」
ドサッとリビングのソファに押し倒されたことに気づいたのは、なにか柔らかいものが唇にあたったと感じたときだった。
「っ、うたくん……」
「柏木って勉強できてもバカなんだな。のこのこ男の家に来て。それとも、全部計算で。悪いことしたい年頃?」
「なんでこんなことするの」
「なんでって。そんなの――」
躊躇うことなく唇を重ねてくる。
慣れてるのかな。
どうしていいか、わからないよ。
「男と女が二人きりでいて。他にやることあるわけ」
うたくんからのキスを拒めない。
こんなに一方的なのに。
なんでだろう。
――全然、いやじゃない……。
「……ご、はん。ごはん作ろう!」
「はあ?」
「今夜はわたしと、食べよう。一人じゃないよ!」
流されるな、わたし。
こういうことはクラスメイトとやるものじゃない。
「誰が料理なんかするか。金ならもらってる。下のコンビニ行くなり出前とるなり――」
「ダメ! 絶対に作るの! わかった?」
「……好きにすれば。ただし俺は手伝わない」
うたくんが身を起こし、わたしから離れる。
「冷蔵庫見せてもらうね?」
「泣きもしないし。嫌がりもしないのに。求めてもこないんだな、柏木は」
「わたしと……続き、したかった?」
「うぬぼれんな。こうすれば怖がって俺に二度と近づかないと……」うたくんは、そこで言葉を切った。
「……お前なんなんだよ」
「ごめんね。うたくんの思うような、女の子じゃなくて」


