「……なんだと?」
「自分が心を開かなきゃ相手も開いてくれないよ」
「なに熱くなってるんだよ、柏木」
歩くのをやめないうたくんに、同じ速度でついていく。
そうしているうちに辿り着いたのは――。
「入れば」
うたくんの、マンションだった。
「お、お邪魔します」
「ビビんなくてもいいよ。誰もいないから」
「お父さん何時くらいに帰ってくるの?」
「さあ。夜中かな」
お仕事忙しそうだな。
それじゃあうたくん、
こんな広い家にいつも一人ぼっちなの?
「……そんなに遅いんだ」
「昔から仕事人間だからな。最近は朝帰ってくることもしばしば」
「泊まりのお仕事!?……大変だね」
「つーか。アヤノさんと合流してやることやってから帰ってくんだろ」
「……へ? やること?」
「どうせ食事してホテルでも行ってんだよ。うちでいちゃつかれるのも気まずいけど。あからさまなの恥ずかしくないのかな、あの人たち」
こ、恋人だもんね。
そういうのは、あるよね。
でも、うん、親のそれは想像したくないよね。
それも、相手がよりによって先生……とは。
「どうしよう。スクバとか全部教室だ」
うたくんとここで話をして。
それから学校にこっそり寄って、帰るか。
「カバンなんて別にどうでもよくないか」
「よくないよ……! お弁当箱の中身が」
一日洗わずに放置したお弁当箱を想像して悪寒がした。
「真夏じゃないからセーフだろ」
「真夏のお弁当箱放置事件は絶対にヤバイよね」
「そんなことより家に連絡くる心配したらどうなんだ。サボったなんて親に知られて大丈夫なのかよ」


