「……あのマンション」
「え?」
「ほら。あそこのマンション」
うたくんがそう言って見つめたのは、高層マンションだった。
ここから少し離れてはいるけれど、ここらじゃ一番高いので目立っている。
「そりゃあ……見えるけど」
「あれ、俺の家」
「そうなんだ!」
「アヤノさんも住んでる」
――?
「あ……なるほど。うたくんと先生、同じマンションの住人なんだ!」
「一緒に住んでる」
「……え?」
「気まずいに決まってるだろ。そんなやつが先生なんかやってんだから」
「……えっと、」
頭がついていかない。
「別に単位一つくらい落としたところで俺はダメージないんだよ。だから心配いらないしもう余計な詮索すんな。わかったな?」
「…………」
そんなこと言われても謎が更に深まったわけで。
「え、うたくん、アヤノさんの……恋人なの?」
「なんでそうなんだよ」
「だって同棲してるんでしょ」
「同居だ、同居。アヤノさんは親父の恋人」
「そうなの!?」
「わけぇ女連れ込みやがって。年考えろよなあのクソ親父」
お父さんとうまくいってないのかな。
「あの女もあの女だ。他人のクセに俺の母親ヅラしやがって」
「……え?」
「はやく起きろやら。朝食はしっかりとれやら。うぜぇ」


