夕ご飯。いつもみたいにケイちゃんが作ってくれた。そこまではいつも通り。

 だけど…。

「こっちに座るの?」

「ダメ?」

「ダメじゃないけど…。」

 いつもは向かい合って座るのに何故か今日は隣に座るケイちゃん。
 そして椅子が近いです!

「ココは猫にヤキモチ焼くくらいだからさ。そんなこと考えられないくらいに甘やかそうと思って。」

 意味深に笑みを浮かべるケイちゃんに素直に喜べない。

 しかも改めて言われると恥ずかしい…。猫にヤキモチとか…。

「勘違いってもう分かったから大丈夫!」

 丁重にお断りしても無駄みたい。

「だからそんなこと思えないくらい毎日甘やかすから。」

 ケイちゃんは作ってくれた野菜炒めを箸でつかむと「あ〜ん」と私の口元に差し出す。

「自分で食べれるよぉ。」

 そ、そういえば私の箸がない!

「ダメ。ほら。あ〜んして。」

「…あ〜ん。」

「美味しい?」

「美味しい…です。」

 ケイちゃんは満足そうな顔で自分も野菜炒めを口に運んでいる。

 それ、私に食べさせた箸だから!一緒の箸だから!

 そんなこと訴えることもできないまま、交互に食べる。
 すっごく面倒…。その上、照れる。恥ずかしい。居たたまれない。

「ねぇ。自分で食べたいよー。」

「こんなところにソースつけてる奴がよく言うよ。」

 そう聞こえたと思ったら顔が近づいて…口の端…というかほぼ唇をペロッと舐められた。

「な…な、なめ…。」

 真っ赤になって急いで口を隠す。急いだってもう遅いんだけど。

「ソースついてた。」

 ニッコリ微笑んだ後、ケイちゃんはまた普通の顔で食事を再開してる。

「な、だ、だから食べさせてもらうから上手く食べれないんでしょ!」

 動揺している私の方がおかしいみたいだけど、こっちが普通ですからね!

 もぉ!と席を立って箸を取りに行こうとすると手を掴まれた。

「ダメだろ。食事中に席を立ったら。」

 お行儀が悪いとか言っちゃうわけ?

 立ち上がった私は座ったままのケイちゃんを見下ろすと色気だだ漏れのケイちゃんと目が合ってしまった。

 ホント今日のケイちゃんどうしちゃったの!?

「なぁ。やっぱりココのリップ甘いね。」

 そ、そんな感想いらないぃ!!!

 私は手を振りほどいて歩き出す。

「どこ行くんだよ。」

「トイレ!!」

 今はちょっと避難しないと無理ー!!