キッチンでにらめっこしているとケイちゃんが降りて来た。

「何してる?」

「ん?私にもラテ作れないかなぁって。」

 テーブルには牛乳にコーヒー、泡立て器も出してあった。
 そのかたわらにスマホ。

「あぁ。調べた?」

「うん。調べました。簡単って書いてあるけど私には難しいかも…。」

「ハハッ。いいから座ってろよ。」

 ケイちゃんから戦力外通告を受けてダイニングの方に座る。

 カシャカシャの音と香ばしい匂いに癒される。

 少しすると目の前にカップが置かれた。今度はクマちゃん。

「可愛い。」

「今日、店で優ちゃんにも出してあげるつもりだったのに。もっと本格的なやつ。」

 ちょっと棘がある言葉にシュンとする。

「ごめんなさい…。」

「仕方ない。許してやるよ。また優ちゃんとおいで。」

 うぅ。ケイちゃんやっぱり私に激あまだよ…。いいのかな。

 クマちゃんのラテは飲むのがもったいない気もするけど、そっと口をつける。

「美味しい…。」

「フッ。それは良かった。」

 優しいな…。ケイちゃんは。

 レアチーズを食べようと手を出すとフォークをケイちゃんに取られた。

「え?」

「食べさせてやるよ。」

「な…。大丈夫。子どもじゃないんだし。」

「俺の料理、食べないで帰った罰。」

 はぅ…。そう言われたら何も反論できない。

 小さくカットされたレアチーズがフォークに刺されて口の前に差し出される。

「ほら。あーん。」

「う…あーん。」

「美味しい?」

「はい…美味しいです。」

「良かった。ここ何日か死んだみたいに食べてたぞ。ココのいいとこなんて美味しそうに食べるとこくらいだろ?」

 ん?ん?ちょっと待って。なんかすっごく棘いっぱいじゃなかった?

「料理人が嬉しいことを復唱して。」

「え?何?なんだっけ?」

「作った料理を美味しそうに食べること!ほら。言えよ。」

 なんでなんか命令な感じ?

「言えないならもう作らない。」

「え!待ってよ。ケイちゃんの料理食べれないのヤダ。」

「ふ〜ん。いいこと聞いた。」

「えーなんで?もう作ってくれないの?」

 ケイちゃんは意地悪な顔して何かを企んでるみたい。

「じゃ美味しかったらここにチューね。」

 な…。ケイちゃんはニコニコして頬を指差してる。

「それともこっちのが良かった?」

 指が頬から移動して…。

「ちょっと待って!ほっぺでお願いします!」

 口元とか指される前に!と、ギュッと手をつかんだ。気づれば顔はすぐ近く。

 チュッと頬にキスされて、あわわと椅子にへたり込んだ。

「ま、今回はこれで勘弁してやるよ。次回からはココからな。」

 ニコニコ笑ってるケイちゃんが悪魔に見えなくもない。

 どうしてお色気だだ漏れが再発しちゃったの!?
 心臓がもたないー!