少しするとケイちゃんが席に来て、その姿はコック帽まで被っている料理人の姿だった。

 その格好に余計に緊張する。

「こんにちは。優ちゃんだよね?前はココが迷惑をかけてゴメンね。今日はゆっくりしていって。」

 にこやかな笑顔を向けると去り際に私の頭をグリグリして行った。

「フフッ。愛されてるね。心愛ちゃん。」

「え?そうなのかな…。」

「うん。やっぱり溺愛系お兄ちゃん。」

 溺愛系…お兄ちゃん。そうなんだよね。

 少しするとサラダをトレイに乗せたケイちゃんが席に来た。

 今日はケイちゃんが直接サーブしてくれるみたい。

「彩り野菜のサラダになります。」

「わぁ。美味しそうだね。心愛ちゃん。」

 優ちゃんは嬉しそうにフォークを手に取った。

 うん。前に食べさせてもらったのだ。美味しかったなぁ。

 ぼんやりしているとケイちゃんが声を落として優ちゃんに何かを話していた。

「…元気がないんだ。」

「え?何が元気ないの?」

 ケイちゃんと優ちゃんに一斉に視線を向けられてドキリとする。

「はい。そう思います。心愛ちゃんがご飯を前にしてウキウキしないなんて。」

「それは…。優ちゃんほどじゃないよ〜。」

 ジトリと二人に見られて居心地が悪い。

「喧嘩した友達とは仲直りしたみたいですし、大丈夫ですよ。よく話してみます。」

 優ちゃんがそう言うとケイちゃんは安心したように、またキッチンへ戻って行った。

「え?何が?なんのこと?」

「心愛ちゃんのこと!ケイちゃん心配してたよ。きっと私が今日呼ばれたのはそのせいだね。」

 優ちゃんがなんのことを言ってるのか分からない。

「ココ、友達と喧嘩したらしくて最近元気がないんだ。って。」

 そのために…。ケイちゃんは私が元気ないから心配してくれてて優ちゃんに聞こうと思ったってこと?

「でも…心愛ちゃんが元気ないのは違う人のことででしょ?」

「…うん。」

 やっぱり優ちゃんはよく分かってるなぁ。敵わないや。