今日はいつもよりおめかししてお洒落なレストランの前に立ってる。

 パパに

「大学は自由にさせたから就職は地元でするように!」

って口酸っぱく言われて地元に戻ってきたの。

 佐藤心愛22歳。

 この春に大学を卒業して晴れて社会人。
でも今日は就職祝いじゃないんだ。

「新しい家族を紹介したい。」

 実家に戻って最初に言われたのがコレ。

 我が道を行くタイプのパパのことだもん。ちょっとやそっとじゃ驚かない。

 それにママがお空に還っちゃってから男手一つで育ててくれたパパには感謝してる。

 ママだけを想ってて欲しいなんて子どもっぽいわがままかな…。

 レストランに行くと既にパパは来ていた。

 隣に座る人は…。

 んん?女の人には見えないけど…。
 そっか。
 私達みたいに向こうも連れ子ってわけね。

 パパは私に気づいて顔いっぱいの笑顔で手を振ってる。

 恥ずかしい…。

「心愛!久しぶり。相変わらず可愛いな。」

「ついさっき!午前中に会ってるでしょ!」

 パパったら本当にいい加減なんだから。
呆れた顔を向けても、ちっとも気にしてないし。

「ちょっと離れただけでも会えば再確認するほどに可愛いんだよ!
 佳喜もそう思うだろ?」

 けいき…。甘くて美味しそうな名前…。

 そう声をかけられた人を見ると、名前とは似ても似つかない鋭い目つきに思わず固まってしまった。

 さ、刺さる!視線が!

「ほら心愛。新しい家族の佳喜。」

 無言の佳喜くんにドギマギしながら会釈する。

 えっと…肝心の新しくママになる人は…。

 パパは来たばかりなのに席から立ち上がった。
 どうしたのかな?お手洗い?

「じゃ俺はもう仕事に行かなきゃ。後は若い二人で…。」

「ちょ、ちょっと!パパ?私の…まさかお見合いじゃないよね?」

「何バカなこと言ってるんだ。佐藤佳喜。正真正銘お前のお兄ちゃんだ。」

 謎の言葉と満面の笑みを残してパパはレストランを出て行った。

 仕事って言ったらパパは世界を飛び回っているカメラマン。数ヶ月は帰ってこない。

「こんのクソジジイがー!!!!!」

 思わず叫んだ私にレストラン中の視線が突き刺さったのは言うまでもない。