発表や報告が終わると会食が始まった。

 みんなが自由に話せるように立食パーティーだ。美味しい料理を堪能する。

「だいたいお兄ちゃんって言ってたのに詐欺だろ!詐欺!しかも母さんまで…。」

 やっぱり知らなかったよね…。ルーくん。

「あら。私は喜一さんの『秘蔵っ子』としか言ってないわ。」

 クスクス笑う桜さんに私まで呆気に取られた。

 桜さん…知ってたんですね。さすがです。


 たくさん話して少し疲れてしまった。

 みんなが楽しそうなのを少し離れたところから見て「幸せだなぁ」って余韻に浸る。

「主役がこんなとこで何してるんだよ。」

「ケイちゃん!」

「食べ過ぎた?」

 アハハッと笑うケイちゃん。

 鋭い目つきはどこへやら…目がとろけて無くなってないかな。
 変な心配をしてしまうほどに目尻が下がりっぱなしだ。

「ケイちゃんこそ今日の主役でしょ?」

 大智くんと話したりオーナー夫婦と話したりケイちゃんも忙しそうだった。

 誰と話してても幸せそうで、そんなケイちゃんを見てるだけでも幸せな気分になれた。

「もういいの。ココ不足!」

 腕を回されてギュッとされる。みんながいるのに!と思うのに不思議と誰も見ていない。
 それでも顔は赤くなる。

 ケイちゃん本当に恥ずかしがり屋だったのかな…。

「そういえばココを向こうにも連れて行かなきゃな。」

「向こう?」

「あぁ。俺が高校まで育った施設。」

「ねぇ。もしかして…そこも佐藤さんばっかり?」

「ハハッ。全員ではないけど確かに多いかもな。」

「やっぱり…。」

「なんで?」

「ううん。なんとなく。」

 佐藤って名字が嫌だって思った時もあった。なんて平凡でありきたりで…って。

 でも今は多めの佐藤さんに囲まれて、私の周りはとても賑やかで、とっても幸せです。