真夜中。

 ザーザーと激しい雨音と、バタンとドアの閉まる音に目が覚めた。

 ケイちゃん起きたのかな?

 そう思ってリビングに行ってみようかなと部屋のドアを開けた。

 廊下の明かりがついていて、そこには真っ青な顔をしたケイちゃんが立っていた。

「ココ…やっぱりダメだったか?雨…。」

 何を言って…。

「私の心配よりケイちゃんこそ大丈夫?
 私は雷が鳴らなければよっぽど…。」

「そっか…。」

 心配になって近づいた私の肩にケイちゃんが頭を乗せる。

「ダッセーな。俺。」

「ダサくないよ。っていうかダサいって何が…。」

「一緒に寝て…。」

 ドキンッと心臓が跳ね上がる。

 弱ってるみたいだけど、弱ってる時ってお色気もだだ漏れするもんなの!?

「あの…。ケイちゃん?」

「とにかく来て。」

 手を引かれ、ケイちゃんの部屋へ逆戻りすることになった。

 ベッドに入るとがっちり抱きしめられて、息苦しいくらい。
 ドキドキしているとケイちゃんに似合わない弱々しい声がする。

「どこにも行ったりしないよな?」

 その言葉はギュッと私の胸を締めつけた。

 そうだ。ケイちゃんも雨のせいでママが亡くなったと思ってて、自分が大切だって思うと居なくなるって…。

「大丈夫だよ。私はその辺はママ似じゃなくてパパ似みたいで頑丈だから。」

「頑丈って…。」

 ククッと笑う笑い声も心なしか力無い。

「ココ…。」

 甘い声と一緒にケイちゃんの顔が私の顔を覗き込むように近づいてきた。

 ドキドキし過ぎてギュッと目をつぶる。

 フッって漏れた息が髪に触れて、その後まぶたに優しくキスされた。

「カチンコチンだな。」

 ついでに頭にもチュッってされる。

 そりゃそっちは慣れてるんでしょうけど!

「俺も緊張してる。」

 心を読まれたような言葉のあと手を取られケイちゃんの胸に当てられた。

 ドキドキと早い鼓動を感じて何故だかこっちが照れてしまう。

「おかげで少し雨のこと忘れられる。」

 そうつぶやいたケイちゃんにまた顔を覗き込まれると「愛してる。ココ」ってささやかれて、そっと唇が重ねられた。

 ゆっくり確かめるように何度も重ねられる唇。

「雨を忘れられるように夢中にさせて…。」

 甘いささやきは色っぽ過ぎて、頭で上手く処理できない。

 夢中にって…夢中にって…。もうすでにキャパオーバーしてるのに何を…。

 頭がぐるぐるして、ギュッとケイちゃんにしがみついた。

「ハハッ。冗談。ここに……いてくれるだけでいい。」

 そう言ってまた優しく唇を重ねられて、胸がキューッと締めつけられた。

 抱き寄せられて頭の上からささやかれる。

「ココ以外、何もいらない。だから………どこにも行かないでくれ。」

 かすれた声に切なくなって何度も何度も頷くことしか出来なかった。