暗い病室。

 廊下から漏れる非常灯の光が部屋に漏れる。

「ケイちゃん。寝ちゃった?」

「いや…。」

 いつもの声に安心する。

「ゴメンね。こんな変な家族に巻き込まれて。」

「…あぁ。そうだな。」

 改めてこんな風に話すとケイちゃんはお兄ちゃんでもなんでもないんだって実感して何故だか寂しくなる。

「こんな私と一緒に住むなんて本当は嫌だった?」

「ハハッ。そうだな。頭軽そうだなとは思ってた。」

「頭軽そうって!かなりの悪口!」

 いつも底なし沼のような優しいケイちゃんとは違う。棘たっぷりだ。

「俺の本性なんてこんなもんさ。ガッカリしただろ?」

 ガッカリなんて…。だいたい…。

「隠しきれてなかったから大丈夫!」

「本当かよ。」

 ハハッと力ない笑い声が聞こえた。

「…私は、そうだなぁ。遊び人!って思ってた。
 そうだ。彼女とか大丈夫だった?
 だって最初の日になんか遊び人、発言してたのに…。」

 声が聞こえなくなって、寝ちゃったのかな?ってケイちゃんの方を見ると苦しそうに顔を歪めていた。

「ケイちゃん?」

 起き上がって額に手を当ててみると、ものすごく熱い。先生を呼ばなきゃ!

「…バカココ。行くなよ。大丈夫だから…ただの風邪…だ。」

「でもすごくつらそうだよ。」

「いいから。ここに…いろ。」

 ここにって…。行くなって引かれた腕のせいで、ほぼベッドに入っちゃってるんですけど?

 あの遊び人と思ってた会話の後に、この状態ってどうなの!?ってふざけたことを思ってるのは私だけだね。

 つらそうな顔がすぐ近くにあって、そっとおでこに手をあてる。

 熱い…。

「寝てれば…治るから…。どこにも…行かないで…くれ。」

 うなされて意識朦朧として言ってるって分かってるのにドキドキする。

 それでも放ってはおけない。そして腕も離してくれない。

 諦めてケイちゃんに腕を預けたまま、ケイちゃんのベッドにお邪魔した。
 隣に横になると安心したように腕の中に収められた。

 ナチュラル過ぎてやっぱり慣れてますよね?としか思えない…。

 私は倒れたと言っても薬と点滴で元気になってすぐにでも退院できますと言われ、もうなんともない。

 それでもたくさんの色々があり過ぎて目を閉じると自然と夢の中へといざなわれていった。