違うの。違うよ、有紗。あたし、あなたの事を考えてただけ――

「いや、あの」

「言い訳は聞かん。放課後職員室だ。色恋に惚けているアホには然るべき対処をせねばな」

 呆然とするあたしをよそに、厳つい顔をさらに怖くした先生がふん、と鼻を鳴らして宣言した。

 有紗はまだこちらを見ている。首を横に振ろうとしたけど……その前に、すっと、視線を逸らされてしまった。



 違うの。違うんだよ有紗。
 ねえ、違うの。信じて。こっちを向いて、有紗。




 そう心の中で強く強く念じたのに、いつまで経っても有紗がこちらを向くことはなくて。

 あたしの頭に、かなづちで殴られたかのような衝撃が降ってきた。