side凜華
目を開けると、そこは知らない部屋だった
昨日のことはあまり覚えていない…
夢でなければ私は昨日、誰かに見つけられて
そこから気を失ったはず…
それまでのことは…思い出したくない…
身体に力を入れようとしたとき
部屋のドアが開かれた。
目を向けた先にいたのは私でも知っている
『夜の皇帝』だった。
「あ、の…」
「よく、休めたか?」
「あ、はい…まぁ」
噂に聞いていたよりも優しい声色に
少しだけホッとした。
女には興味も示さない冷酷な男
父親譲りの赤い瞳、母親譲りの美顔
人々はその姿を見るだけで震え上がる。
でも、今私の目の前にいる人は
そんなものを微塵も感じさせないほど
穏やかな顔をしていた。
もしかして人違いとかある?

