自分はしばらく黙っていたが、何も言わなさそうだとわかると、
手を離し、咳払いをして少し声の調子を変えた。
「帰ってきたときにやりたいことがありまして」
自分は彼女の目を見る。
少し気恥ずかしかった。
「プロポーズというものをしたいんです」
彼女は固まった。
暫く呼吸を忘れたかのように動かなかった。
そしてゆっくりと手で口を覆い、何度も頷いた。
その度に、彼女の目尻からこぼれ出る涙が粒となって落ちていった。
自分は、ゆっくりと彼女を抱き寄せた。
離したくなかった。
いつまでも胸の中に抱いて置きたかった。
明るく未来を二人で歩んでいきたかった。
もう少しで、その夢が現実となったのに。
この不器用で優しい彼女を残していくのが不憫で。
「だから、約束です。待っていて下さいね。」
自分も涙声になっているのがわかった。


