明日の準備をしていたから、お昼が過ぎた事を忘れていた。


お腹も空いてないし、何だか眠い。


ベットが私を呼んでるよ。


そのまま寝てしまったらしい。


部屋に電話が鳴り響く。


慌てて出ると、夕食の準備が出来ましたと言われた。


あちゃ、又、やってしまった。


お父様とお母様は出かけていていないし。


お祖父様とお婆様は別棟で食事を取っていた。


花枝さんの怒った顔が目に浮かぶ。


このまま寝たふりをしようかな。


このお屋敷で暮らしたいだなんて、もっと考えるべきだった。


重い足取りでダイニングへ向かう。


朝陽さん、早く帰って来ないかなぁ。


「若奥様が座らないと、みんなが食べれないんです。」


すみませんと頭を下げた。


目の前に並んだ料理を見て、思わず声が出る。


私の苦手なものばかり。


ピーマは食べれないし、焼き魚も苦手。


好き嫌いはないと言ってしまったから、どんな事しても食べなきゃ。


これはピーマンではないんだと、自分に言い聞かせて食べた。


大丈夫、大丈夫だから。


気持ち悪い。


「お口に合いませんか?」


「いえ、大丈夫です。」


大丈夫なんかじゃありません。


朝陽さん、早く帰って来て!


花枝さんが睨んでるけど、ピーマンを必死に飲み込む事だけを考えていた。


「はな、大丈夫か。」


泣けて来るの必死に我慢。


「花枝さん、はながピーマが苦手な事は話してありましたよね。はなを虐めるのは止めていただきたい。」


「子供じゃあるまいし、朝陽様が甘いから付け上がるんですよ。」


食べられない私が悪いんですから、怒らないで下さい。


そう言いたくても気持ち悪くて、そのままトイレへ駆け込んだ。


情けない。


こんな事で泣くなんて。


トイレへ朝陽さんが入ってきて、背中を差すってくれた。


「はなを一人にしてごめんな。」


花枝さんとはどうしたら仲良くなれるのだろうか。


嫌われたままじゃ駄目だ。


でも、ダイニングに戻る勇気がなくて、朝陽さんにそのまま部屋に連れて行かれた。


「はなの好きなケーキ買ってきたんだ。一緒に食べよう。」


嬉し涙なのか、悲しくて泣いてるのか、分からなくなってしまう。


朝陽さんが買ってきてくれたケーキは、本当に美味しくて、いつの間にか涙は止まっていた。


朝陽さん、ありがとう。