「最初は変な女だと思った。だが、話を聞いているうちに彼女と重なる部分が多くなった。だから俺はお前を助けたいと思ったんだ」


ずっと、何故私と向き合ってくれていたのか不思議に思っていた。松村さんの言葉でその理由が少しずつわかってくる。


松村さんは、"私"ではなくその奥に見える"元カノ"を見ていたのかもしれない。その人と重ね合わせ、同じ運命を辿らないように支えたいと思ってくれていた。そう考えるしかない。


私は確信した。私は、松村さんの一番にはなれない。



「お前がこの前、俺に好意を抱いているような発言をした。確かに俺はお前を支えたいとは思う。だけど、付き合うことはできない」


それはきっと…


「お前と彼女は別人だとわかっている。だけど絶対、比べてしまう」


その人との思い出が強すぎて、幸せな時間だったからこそ…


「だから…ごめん」


大切にしたい、そう思うんだ。



いつの間にか、目の前に広がる絶景がボヤけていた。涙だ。私、泣いているんだ。


溢れないように上を向く。松村さんはきっと、この涙に気づいているだろう。



「付き合えないけど、側で支えたいとは思ってる」


.やめて、そんなのわたしが惨めになるだけ。叶わないとわかっているのに、側にいるだけなんて辛い。


「い….い」


「え?」


喉が詰まる。これを告げたら松村さんと二度と会えない気がして、悲しくなって言葉が喉を通らない。


でも、これは私のためでもあり彼のためでもある。


多分、付き合っていなくても、私といるだけで松村さんは辛くなると思う。


だから…こうするしかないんだ。



「私、もう松村さんと会うの、やめる」


告げた途端、我慢していた涙が溢れた。今まで不透明だった自分の気持ちが鮮明になる。


好き…松村さんが好き。