咲夜さんが私のことを名前で呼ぶのはいい。
私だって名前で呼ぶことになっているし。
でも、それがどうしたら友人同士に繋がるのかさっぱり分からない。
「嫌ですか?私のことは嫌い?」
「うっ!そ、んな聞き方は……ズルい」
首を僅かに傾け、潤んだ瞳で見つめてくる咲夜さん。
自分の美貌が相手に対してどう作用するのか分かっているのか分かっていないのか、問答無用で使ってきた。
嫌というよりも無理!
そうスパッと言い切ってしまえたらいいのに、今の表情を見せられるとなかなか言えなくなってしまう。
背は私より高いけど小動物のような咲夜さんに、私は保護欲を駆り立てられるようだ。
空港で図らずもすでに一度、助けを求められるような状況にあったことも影響しているかもしれない。
「友人がほとんどいない私を、圭さんは友人と見てくれないのですね」
「分かりました!分かりましたから!!ただし!!ご家族の前ではちゃんと雇用者、被雇用者の関係ですからね?」
「……まぁ、とりあえずはいいでしょう」
満足そうに笑う咲夜さんとは対照的に、私はドッと疲れが押し寄せてきた。
決してこれは長旅の疲れだけなんかじゃない。
むしろ、着いてからの方が疲れたような気がする。



