それからもう一つの本の方は家族写真のアルバムだった。
年に一回、家族で集合写真を撮るらしく、その写真が一番最初に貼ってあった。
「小此木家は華道の月影(つきかげ)流の家元の家系で、代々の当主がその家元の座を継ぐことになっているのです。そして、ここにいる咲夜様はその月影流の次期家元、小此木家の次期当主となられるお方」
「そ、そんな上の方だとは露知らず……すみませんでした!」
次期当主にわざわざ空港まで迎えに来させるなんて……西森先生、どうして止めてくれなかったんですか!
恨みますよ、ほんとに!
……あの先生のことだから、面白そうだったからと切り返されるに決まってそうだけど。
「顔を上げてください。華道家元なんて、別に偉くもなんともありません。それよりも、難しい医師試験に合格された佐倉さんの方がずっと偉いですよ」
「いや、それは……雇い主だし……」
「ではこうしませんか?」
「え?」
ニコリと笑う咲夜さんの顔が、若干黒さを帯びたような……気がする。
「そんなに雇い主とかそういう関係が気になるようでしたら、私も佐倉さんのことを圭さんとお呼びします」
「はぁ」
「ですから、私とあなたはまずは友人同士ということで」
「……え?」
咲夜さんの提案は私の想像の遥か彼方を行っていた。
それを理解するのに、一瞬、いや十秒くらいはかかってしまった。



