国際線ターミナルの入国ゲートは、旅行や出張など海外から日本へ帰ってきた人達でごった返していた。


手荷物検査と税関を通り、国際線到着ロビーへと買ったばかりのハイヒールの靴音を響かせながら進んだ。


すると当然だけど、目にするもの、耳にするもの全てが日本語。


医師国家試験に合格して、インターンが終了した後すぐに交換臨床研修医としてイギリスに渡航して丸々二年の間、帰国していなかったからなんだか新鮮味を帯びている。


バッグの中からスマホを取り出し、とある連絡先を探しあて、トンと画面をタッチした。




『はい』


「西森先生ですか?佐倉です」


『おー!圭くん、着いたか。悪いな、今日は迎えにいけなくて。急にこの後会合が入ってしまってなぁ』


「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、この間の話ですが」


『うんうん、実はな、君がこれから専属医になる家の息子さんが迎えにいってくれているそうだ』


「えっ?ちょっ、話が……ここに、ですか?」


『まぁ、君の送別会の時の写真は渡してあるから大丈夫だろう。……すぐ行く!じゃあ、また何かあったら連絡してくれ』


「ちょっと待って、先生!まだ完全に引き受けたわけじゃ……切れた」




電話の向こうで呼ばれたらしい西森先生は私の静止を聞くことなく電話をきってしまった。


そういえば、昔から人の話を聞かないって有名だったっけ。


仕方なしにスマホをポケットに戻し、辺りを見渡してみる。


相手は分かっても、私は分からないし……弱ったなぁ。