見上げると、ちょうど小此木さんの肩の位置に太陽が来ていて、完全に逆光になっていた。
眩しくて目を細めると、小此木さんの手が私の方に伸びてきた。
「……あんまりこちらを見ると、目を傷めますよ」
「あ、そう、ですね」
すっと目蓋を覆われた手が温かい。
「小此木さんは餌あげなくていいんですか?」
「えぇ。幼い頃から見慣れているものですし。あまり与え過ぎるのも彼らの健康上良くないでしょう?」
確かに。
獣医学は専門外だからよく分からないけど、人間と同じように食事のとりすぎは良くないかも。
もう餌やりは終わりだと鯉達に言外に伝えるべく立ち上がった。
「餌、ありがとうございました。後で垣内さんに場所を聞いて直しておきますね?」
「私から直すよう言っておきますよ」
「大丈夫ですよ。これ以上小此木さんの手を煩わせるようなことできませんから」
「……私はそんなに頼りない?」
「え!?いや、そういうわけじゃ!」
表情に陰りを纏(まと)わせ、僅かに目を伏せる小此木さん。
白皙(はくせき)の美青年がする表情としては反則だ。
私はただ、雇用主の手を煩わせる使用人がいるかってことで。
……分からないけど、なにか負けた気がする。



