「お待たせしました」


「いえ、私の方こそすみません」


「謝るのは無しですよ。さ、餌やりしましょう」


「はい」




餌が入った袋を小此木さんから受け取り、橋の上でしゃがみこんだ。


袋を開けるためにガサガサと音を立てると、人が近づいてくると餌をもらえると理解しているのか、たくさんの鯉がパクパクと口を開けて寄ってくる。


本当に一匹たりとも同じ模様の鯉がいないので、見ていてとても楽しい。




「ほぉら、餌だよー」




餌を投げ入れたらすぐに餌争奪戦が始まった。


まだ体の小さな鯉はそれにすぐ負けてしまうので、なんだか可哀想になってしまってついついその子がいる方へ投げてしまう。




「あ、食べた!」




見事その鯉が餌をゲットした時は思わず声が出てしまった。




160㎝はあっても、欧米人は背が高い人が多い。


日本にいる間はそうでもなかったけど、渡英してから周りはイギリス人がほとんどだったから、背の小ささは割とコンプレックスだった。


小さい頃は弟妹がいる環境に憧れていたし、基本的に小さなものが好きなんだとも思う。




「変わらないね」


「え?」




鯉達が元気に飛び跳ねる水音に紛れ、上から声が降ってきた。