再会からそれは始まった。

ふと隣に人の気配がして、目をあける。

そこには南君が座っていて、フッとため息をついて、シャツの第1ボタンを外してネクタイをクッと緩める仕草をする。
ああ、確かなにかの雑誌で読んだ。
それって、男のセクシーさを感じる仕草ナンバー1だったような。。。。

とボンヤリ見上げていると、ふと彼が私の方を見やり、目を開けてそっちを見ている私にギョッとして、慌てて目をそらす。
「いつから起きてたんだよ?」
「今、、、。」私は、ゆっくりと起き上がり、うーんと伸びをする。
「よく寝た。」

南君は、クスッと笑って
「今度は腹が減ってるんじゃないのか?」

「うん。確かに。」

「じゃ、行こうか?」
スーツのジャケットを片方の肩に引っ掛けて立ち上がる。

「どこに?」

「徹夜のお詫びをしてやるって言ったろ?なんでも奢ってやるよ。」

「いや、、でもこの格好で?」

彼は私のスウェット姿を見て、目をそらす。

「家まで車で送ってやるから一旦着替えてからいこう。」

一旦決めたら、行動の早い人なのだろう。 手際よく私が着ていた今朝の服も紙袋に入れ、車のキーを取ってまだボンヤリしている私の手を引いて部屋を出る。

「ちょっちょっと。私は行くって言ってないし!待ってよー。ねえ!」

「………………」
ムスッとした顔をして私を威嚇するように見下ろし、エレベーターに乗り込む。

こわっ!
つべこべ言うと、その格好で放り出すぞ!って思ってるよ、この人。

引きずられるようにして、地下の駐車場に連れて行かれる。
このビルがオープンしたら、ここにズラリと高級車が並ぶんだろうと想像する。
今は、まだガランとした駐車場に、ピカピカに磨かれた一台の紺のBMWが、止まっている。 予想通りの高級車。

「ほら、早く乗れ。」

私は思う。管理人の田中さんがモニターで見たらビックリするんじゃないかな。

ビルの地下駐車場から地上の出口に車を走らせる南君の横顔を見て、もうなんでもいいやという気になってきた。