再会からそれは始まった。

この部屋を出ようとしても、出られない。

多分、あのカードキーがないとダメなんだわ。最新のセキュリティ。いろいろ手を尽くしたけれど、玄関の扉の開け方が分からず諦める。

それにしても、ここに住んでるってどういう事?

「あの男、ただもんじゃないでしょ」
窓の景色を見る。 夜景もきっと美しいに違いない。
こんな風にいつも東京を見下ろして、日本のトップ、いや世界を股にかけて仕事をしているんだ。
あの南君が、高校卒業をしてアメリカに渡ったというのは、噂には聞いていたけれど。
いったいあれからどうやってこんな雲の上の存在のような人になったんだろう。


私は、もうここから出る事を諦めて、ええい!こうなったらこのセレブ体験を満喫してやる! と溜めてくれたお風呂に遠慮なく入る事にした。



湯船に浸かりながら思い出す。
彼との高校の頃の出来事を。


嫌われていた思い出しかないな。
話しかけても、ほとんど答えてくれなかったし。 避けられていた。
なるべく関わりたくないと、そういうオーラを出していた。

私は、南君の事が気になっていた。 彼のことが知りたいと思っていた。
恋?まではいかないけれど、お友達になりたかった。
けど、彼には高い高い壁があって、決して心を開かなかった。 私には?
ううううん。仲よさそうな周りの男の子達に対しても、今思えばそうだったのかも。
相手にはそれを知られないように。
クラスメートに囲まれていた人気者だったけれど、どこか彼には孤独な雰囲気を背負っていたように思う。