再会からそれは始まった。

話しかけても、またあの怖い顔。

この怖い顔は、高校生の時と変わってない。 とマジマジと南君の横顔を見上げる。

聞いても答えてくれないのはわかっているので、諦めて彼について行く。

ポーンと音がして、扉が開く。

彼は、私の腕を掴み、そのフロアに出て歩き出す。

えっとー、ここはどこ?私は、ダレ?
事務所に案内されるものだと思っていた私は、このフロアのゴージャス感にうろたえる。
高級ホテルかなんか?
え? もしかして、こんな朝っぱらからこの人何か変な事でも考えてる???
鬼畜社長という噂は、やっぱり本当か!?

有無を言わさず、エントランスにカードキーを照らして、中に通される。
ホテルじゃない。ここに、誰かが住んでいるんだ。
広いダイニングに豪華なキッチン。
リビングは、立食パーティーだったら軽く100人は呼べそうなくらいの広さ。
アイボリーの皮張りのソファセットは、いったいいくらするんだろう? 上品なセンスのいい家具でまとめられている。

窓の外を見ると、ここがあのビルの上階のどこかである事がわかる。

「あのー。ここは、どこ?」

「………………。」

またもや無言で、奥のバスルームの方へズカズカと行ってしまう。

キョロキョロと周りを見回していると、バサっとふかふかなバスタオルを頭に投げつけられる。

「ここの風呂を使え。早くこの服も脱げ。洗濯する。」
私のシャツに手をかける。

「ちょっと待ったー!何すんのよ変態!」
私は後ずさりして叫ぶ。

「じゃあ、早く入れ。」
と私をバスルームに押し込む。なんなのよこの威圧感は。

「ちょっと待ってよ。ここはどこなの?いったい。」

「俺の家」
無表情で私を見下ろす。

「はああ?」

「風呂の後は、ここで寝てろ。わかったな。」
出て行こうとする南君のスーツの裾を掴んで、行く手を阻む。

「ちょっ!待てーい!」
と同時に、携帯が鳴る。
彼は電話に出て、私に黙ってろという仕草で私の唇に指をたてる。

「はい。ああ、すまん。今、取り込んでて。すぐ戻る。」
と言って切る。

「悪かったな。徹夜させて。」
私の事を優しく見下ろす目は、私の知らない南君。

あっけにとられて見上げる私をバスルームにおいて扉を閉める。

「夕方には戻るから。勝手に好きなもの食べて飲んでていいし。新崎所長には俺からうまく言っとくから、ゆっくり休め。」
ガラス越しの扉の向こうの大きな身体。

有無を言わさず、そのまま彼はこの部屋を出て行ってしまった。