再会からそれは始まった。

私は、ビル全体のイメージ戦略としてのデザインをメインに仕事をしているけれど、そこから派生してこのビルに入るテナントさんの広告も事務所のデザイナーとしていくつかの店舗のデザインを任されている。

このシアトルから日本初上陸したというコーヒーショップも、新崎所長が請け負った店舗の1つ。
金沢君は、このビルのテナント関係のショップの広告担当なので、最近は彼を通しての仕事が多い。

出来上がったポップは、昨日あれから徹夜して作り直したデザインだ。
朝一で印刷屋に持って行ってゲラを刷ってもらい、そのまま直行した。
今度こそは、文句は言わせねえ。。。。
目の下に隈を作ってフラフラになりながら、地下鉄を乗り継いでこのビルに到着した。

「花ちゃん。その格好、昨日のままでしょ?しかも、そんなに目の下に隈作って髪ボサボサで。」
通用口の田中さんまでも哀れな目をして私を見る。

「もういいんです。私のことは放っておいてください。」

二階のコーヒーショップに到着したけれど、まだ担当者と金沢君は来ていない。
ちょっとだけ寝てしまおう。
ソファがけのフロアで横になる。
新しい革張りの香りがする。

もう少ししたら、ここでコーヒー豆が轢かれて芳香な香りがするようになる。
みんな、ここの美味しいコーヒーが飲みたくてワクワクしてこのお店にやって来るに違いない。。。。
なんて、また妄想しながらウトウトしてしまった。


よく頑張ってくれたと誰かが褒めてくれる夢を見た。
そっと優しく髪に触れて、ありがとうと。

金沢君かな?
いや、彼はそんな事は言わないよね。

誰かな?
でもすごく嬉しかった。

そんな夢。