再会からそれは始まった。

彼らが去ってから少しして、また秘書の女の人が戻ってきた。

「あなたたち、傘持ってないでしょう? 外はすごい雨よ。」

「え?」
外を見るとけっこうな降りだ。

「これどうぞ。」とビニール傘と黒い高級そうな女物の折り畳み傘を差しだす。

「え、松山さんやボスは?」
金沢君があわててきく。

「こっちにも一本あるから大丈夫よ。」

「へええ、ボスと相合傘ですね!」

「バカなこと言わないで。こっちは、返すのいつでもいいから。じゃあ。」

「すみません。ありがとうございます。」
私はぺこりと頭を下げる。

松山さんというその秘書の女の人はふわっと笑い、入り口で待っている南くんの元へ小走りでかけていく。
大きな男物の傘に二人で入って出ていく姿を目で追い

「へええ。」
とフ抜けた声が出る。

「ちょっと、なんで知り合いナンスか?! しかし、クライアント先のトップの名前くらいチェックしときましょうよ! いくら末端の仕事をしてるからってですね。 いくらなんでも失礼ですよー。今の。」
金沢君が、また私に説教をする。

「ええ?だってそういうのは、新崎所長の仕事だし? しかし、南くんがねー」

「どういう知り合いなんすですか?!」

「高校の同級生。一緒に図書委員やったなあ。あんな感じで威圧感たっぷりで話しもできなかったけど。」

「えええ!!??あの人と花さんが同じクラスに?? なんだこの数年後のこの差は。」

「ぬあにー!!!もう一回言ってみろ。んのやろー!」
バカ金沢の首を羽交い絞めにしてやった。