「あ、ボスだ。」
と隣の金沢君が、一瞬背筋がピンと伸びてにわかに緊張してるのがわかる。
向こうからゆっくりとガタイのいい大きな男が歩いてくる。
ビシッとブルーのシックな高級そうなスーツを着こなしていて、まさに天下のB.C.コンサルタントのしゃっちょさんの雰囲気を醸し出している。
ああ、あれが噂のスーパーマン。私にとってはどんでん返しのドS社長さん。
このおとぼけ金沢君がこんなに隣で緊張されると私もついその雰囲気にびくびくしちゃうじゃないの。
とりあえず頭を下げて言ってみる。
「はじめまして。お世話になっております。」
新崎所長が、私を紹介する。
「いやあ、彼女、今回のプロジェクトの私のデザインチームの一人です。ロゴも彼女の制作ですよ。今も、仕事であのビルに来ていたんだっけね?」
「はい。金沢さんと打ち合わせで。」
「磯崎 花」
低い声で、私を見下ろして、目の前のオーナー社長が呟く。
「え?」
私は、驚いて、目の前の社長の顔をまじまじと見上げる。
新崎所長も金沢君もびっくりして、一瞬固まる。
私は、彼の顔を見て一気に高校生のあの時に舞い戻った。
そうだ、彼は、このくらいの背丈でいつもこんなふうに私を見下ろしていた。
「南 一徹」
私もそう呟く。
「え、知り合いなの???」
新崎所長がすっとんきょうな声を出していう。
「南さん、お待たせしました。」
と同時に秘書らしききれいな女性が、後からきて、私たちの衝撃的な再会に鉢合わせるかたちとなった。


