再会からそれは始まった。


秘書松山 SIDE

「はい?」
私は最初金沢君の言っていることを笑い飛ばした。

それって、朝の憂鬱な通勤を軽快にするためのジョークかなんか?
「私、彼女の部屋に行ったことあるけど。
あなたの言っていることが本当だとしてもね、あの大きな南さんが同居できるようなスペースなんてまるでないわよ。散らかりすぎていて。」

「しかも、あれは酷いわ。女の一人暮らしの部屋っていうもんじゃないわね。
洗濯物はそのままソファに山積み。コンビニで買ったお弁当のゴミや空き缶がそのまま。
あなたが、あの磯崎花の部屋に行ったら、百年の恋も冷めるわよ。」

「・・・・・・じゃあ、やっぱりただの冗談ですかね?」
と金沢君はほうっとため息をつく。

「ほんとに、大丈夫なの?変な夢にうなされでもした?」
私は、哀れな目で金沢君を見やる。

「はあ・・・・。」
すっかり気落ちした金沢君を見て、なんだか胸騒ぎがしてくる。
いや、あの磯崎花の事だから、何かの間違いでそんな事もあり得るのかもしれない。

秘書室に入ると、もう既に南さんは来ていて、コーヒーを飲みながら新聞を隈なくチェックしている。
これも、彼のいつもの日課。
全く変わったそぶりはないし、いつもの日常なんだけど。

「おはようございます。」

「おはよう。」

「・・・・・。」

「?なに?」

「いえ。 今日のスケジュールをさっそく確認してよろしいですか?」

「ああ。頼む。 あ、それから、今日は五時にあがるからそのつもりで。」

私は、ロッカーに薄手のコートをしまう手を一瞬止め、振り返る。

「何かご予定が? 今夜はK省の前田大臣とのご会食が入っていますが?」

「・・・・ああ。そうか。忘れてた。」
そう言って、また新聞に目を落とす。